街を走る車には、私がつくった刃具が生かされている。
その事実が、やりがいとやる気につながります。
日本刃研に入社したのは32歳で、それまで従事していた建設業からの転職でした。私が担当するのは2番取工程。切削するものと切削用刃具の摩擦を避けるために、切れ刃の背面に“逃がし”をつくる作業を行います。人が暮らす場づくりから刃具製造へ、サイズも工程も全てが異なるので先輩の指導が頼りでした。
加工はNC機械で進める方法と手作業で行う方法があります。機械を使う作業では、操作方法やプログラムの設定方法、手作業の場合は工具の使い方といった初歩の初歩から学習。まずは簡単な加工、慣れてきたら徐々に難度の高い形状の加工へと進んでいきました。入社から13年が経過した今でも、細い製品や複雑なねじれ加工は難しいと実感。機械でも手作業でも変わらない精度を実現するために、多く経験を通して技術を磨いています。
これまでのキャリアの中でターニングポイントになったのは、バニッシングタイプと呼ばれる刃具の加工を行えるようになったことです。この製品は切削と研磨を同時に行うもので、羽裏側とガイド側に均等なマージン幅を取ることが製品精度を決定づけるポイントになります。ねじれがある場合は特に難しく、高い技術力が求められます。それだけに完成した時の達成感は格別。先輩にも評価された仕事になりました。
現在の課題は、手作業での加工スピードを上げること。5分かかっているところを4分、3分と短縮していくことが目標です。そのために重要なのは、2番取の作業ステップ一つひとつの効率化。かなり難しいことですが、私が携わった製品が自動車部品の製造に使われ、街を走っている車に生かされていると思うと、やりがいを感じると同時に次へのモチベーションになります。